第77期名人戦7番勝負/第1局「名人の模様を凌ぎ、豊島ニ冠の攻勢で終盤戦突入」
4連覇を目指す佐藤天彦名人に
豊島将之ニ冠が挑戦する、第77期名人戦7番勝負。
将棋界に春の訪れを告げる歴史と伝統のタイトル戦が
昨日より、東京都文京区「ホテル椿山荘東京」にて開幕。。
振り駒で決まる開幕戦の手番で
貴重な先手を得たのは、佐藤名人でした。。
10手目△7七角成。
上図での持ち駒
▲佐藤名人: なし
△豊島ニ冠: 角
佐藤名人の初手は飛車先を突く▲2六歩から。
対します、豊島ニ冠も2手目に同じく飛車先を突く
△8四歩と返し、対局はスタートとなりました。。
次に両者は息を合わせて
飛車先を決め、まずは「相掛かり」の出だしとなると
そこから「角換わり」を目指す、定跡手順の進行となり
迎えた上図の局面で、豊島ニ冠が角交換を敢行します。。
41手目▲5三桂成。
上図での持ち駒
▲佐藤名人: 角、歩
△豊島ニ冠: 角
手損のない正調の角交換が成立すると
双方、最新形に自陣の駒を組み上げてから
先に仕掛けた佐藤名人が、跳ねた桂馬をそのまま
敵陣へと成り捨て、強く踏み込みます。。
が、しかし。。
【 千日手成立局面・58手目△8ニ飛 】
上図での持ち駒
▲佐藤名人: 歩
△豊島ニ冠: 角、桂
いよいよ開戦かと思われた、次の瞬間
佐藤名人が敵陣角を打ち込み、馬を作ると
飛車と馬の追いかけっこが繰り返され、急転直下
上図でまさかの「千日手」が成立しました。。
「千日手」の成立は午後3時2分。
午後3時を過ぎての「千日手」成立の指し直し局は
一日目残り時間を折半して両者の持ち時間から差し引き
手番を入れ替えあらためて、二日目に行なわれる。。
今まで誰も知らなかったルールが適用され
一日目は「封じ手」もないまま、異例の終了となりました。。
一夜が明け
迎えた本日、仕切り直しにして決着の二日目。。
2手目△8四歩。
上図での持ち駒
▲豊島ニ冠: なし
△佐藤名人: なし
先手を得た豊島ニ冠の初手は飛車先を突く▲2六歩から。
対します、佐藤名人も2手目△8四歩と同じく飛車先を突き
一日目と同じ出だしで指し直し局はスタートとなりました。。
6手目△8五歩。
上図での持ち駒
▲豊島二冠: なし
△佐藤名人: なし
次に両者は角道を開いてから飛車先を決め
同形模様の出だしから、「横歩取り」を目指します。。
14手目△8六同飛。
上図での持ち駒
▲豊島二冠: 歩2
△佐藤名人: 歩2
そのまま確立された定跡手順を踏襲し
互いに角頭を金で受け、飛車先で歩を交換して
迎えた上図の局面で、豊島ニ冠は次に。。
15手目▲3四飛。
上図での持ち駒
▲豊島ニ冠: 歩3
△佐藤名人: 歩2
2筋の浮き飛車で、お隣り3筋の歩をかすめとり
指し直し局の戦型は両者得意の「横歩取り」に決定。。
17手目▲5八玉。
上図での持ち駒
▲豊島ニ冠: 歩3
△佐藤名人: 歩2
3筋に回った先手の飛車先を
佐藤名人が角で受けると(16手目△3三角)
豊島ニ冠はノータイムで、飛車を引かずに玉を立て
「横歩取り」の変化で最も激しい「青野流」を採用しました。
この手をみて、佐藤名人は。。
18手目△5ニ玉。
上図での持ち駒
▲豊島ニ冠: 歩3
△佐藤名人: 歩2
同じくノータイムで玉を立て
まずは「相中住まい」に構えると、次に
豊島ニ冠が3筋の歩を突いたのをみて。。
(19手目▲3六歩)
20手目△7六飛。
上図での持ち駒
▲豊島ニ冠: 歩3
△佐藤名人: 歩3
8筋に浮かせたままの飛車で
お隣り7筋の歩をかすめとり、「相横歩取り」に。。
22手目△7四飛。
上図での持ち駒
▲豊島二冠: 歩3
△佐藤名人: 歩3
7筋に回った後手の飛車先を
豊島ニ冠が同じく角で受けると(21手目▲7七角)
佐藤名人はすかさず飛車を7四の地点に引き下げ
早くも飛車交換を注文しました。。
豊島ニ冠は10分の考慮の後
この申し出を受け入れ、飛車交換が成立します。。
(23手目▲同飛~△同歩~)
すると、さらに。。
26手目△7七角成。
上図での持ち駒
▲豊島ニ冠: 飛、歩3
△佐藤名人: 飛、角、歩3
飛車交換成立直後
豊島ニ冠が桂馬を跳躍させると(25手目▲3七桂)
佐藤名人は1分の少考で角交換を敢行。。
立て続けに大駒が捌かれました。。
30手目△6四角。
上図での持ち駒
▲豊島ニ冠: 飛、角、歩2
△佐藤名人: 飛、歩2
豊島ニ冠が飛び込んで来た角を▲同桂(27手目)で払うと
佐藤名人はがら空きの8筋に嫌らしく歩を垂らします。。
(28手目△8六歩)
しばらくは受けに回らざるを得ない
豊島ニ冠が低く受けたのをみて(29手目▲8八歩)
佐藤名人は手持ちの角を戦場に投入しました。。
34手目△8ニ銀。
上図での持ち駒
▲豊島ニ冠: 飛、角、歩2
△佐藤名人: 歩2
さらに飛車も敵陣に投入し(32手目△2八飛)
ダイナミックな指し回しで形を決めた佐藤名人は
上図で自陣に手を戻し、銀を8筋に開いて構えます。。
通常では△7ニ銀が金と連結し自然に見えますが
「横歩取り」の後手番で史上最強とも謳われた佐藤名人が
26分の考慮で投入した一手には、いかにも何かありそう。。
この手をみて、豊島ニ冠は手を止め長考に耽ります。。
36手目△2四飛成。
上図での持ち駒
▲豊島ニ冠: 飛、角、歩2
△佐藤名人: 歩2
1時間53分にも及んだ大長考の末に
豊島ニ冠が玉の頭上へ銀を乗せると(35手目▲6八銀)
佐藤名人はそっけなく、8分の考慮で飛車を引き下げ龍を作った
上図の局面で午前の対局は終了、お昼休憩に突入。。
【 お昼のメニュー 】
豊島ニ冠: うな丼・温かい蕎麦・お茶
佐藤名人: ビーフカレー・リンゴジュース
のっぴきならない展開で迎えた
午後の対局開始となっても、豊島ニ冠は手止めたまま
考慮を続け、先の模様を読み耽ります。。
36手目△6五桂。
上図での持ち駒
▲豊島ニ冠: 飛、角、歩2
△佐藤名人: 歩2
午前と合わせて37分の長考で
豊島ニ冠は左の桂馬を戦場へと跳躍させ
このタイミングで攻勢に転じました。。
40手目△7三桂。
上図での持ち駒
▲豊島ニ冠: 飛、角、歩2
△佐藤名人: 歩2
先手に拠点は作らせないとばかりに
佐藤名人は龍を角の横に引き寄せてから
右の桂馬を跳躍させ、桂交換を迫ります。。
この手に対し、豊島ニ冠は
29分の考慮の後、▲同桂成(41手目)と応じて
以下、△同角~▲4八金~△4ニ銀~▲4六歩~△同角に
▲4七銀~△7三角をみて、下図49手目▲5六銀と進行。。
49手目▲5六銀。
上図での持ち駒
▲豊島二冠: 飛、角、桂、歩2
△佐藤名人: 桂、歩3
桂交換成立直後
豊島ニ冠は握った手番で銀を5筋の戦場に繰り出し
来るべき反撃へ、あらたな拠点を築きました。。
54手目△2六歩。
上図での持ち駒
▲豊島ニ冠: 飛、角、桂、歩
△佐藤名人: 桂、歩2
しかし、佐藤名人は強かに。。
龍を左右に振りながら、文字通り揺さぶりをかけると
2筋に嫌らしく歩を垂らし、先手に足掛けをはめます。。
この手に対し、豊島ニ冠は。。
55手目▲6五桂。
上図での持ち駒
▲豊島ニ冠: 飛、角、歩
△佐藤名人: 桂、歩2
手持ちの桂馬を再び6五の地点に投入。。
名人の角にあて、強く攻勢に転じました。。
57手目▲3五角。
上図での持ち駒
▲豊島ニ冠: 飛、歩
△佐藤名人: 桂、歩
佐藤名人が狙われた角を6筋に上げてかわすと
豊島ニ冠はすかさず手持ちの角を後手の起点である
龍のコメカミに突き立てました。。
62手目△2ニ角。
上図での持ち駒
▲豊島ニ冠: 飛、歩
△佐藤名人: 桂、歩2
佐藤名人が龍と角との交換に応じると
豊島ニ冠は手にした飛車を2筋に投入(61手目▲2四飛)
この手に対し、佐藤名人が自陣低くに角で受けた局面で
夜戦に備えて夕食休憩突入となりました。。
佐藤名人が積極的に模様をリードしましたが
しかし、豊島ニ冠はギリギリのところで均衡を保ち
手番を握った現局面では、ついにチャンス到来か。。
夕食休憩明けの攻防に期待と緊張が高まります。。
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舞台は東京
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