この大局観、この後味。。第65期王座戦5番勝負/第3局「終盤戦を振り返ろう」
81手目▲6一飛。
上図での持ち駒
▲中村六段: 桂2、歩2
△羽生王座: 銀、桂、歩4
昨日、新潟県にて行なわれました
第65期王座戦5番勝負の大一番/第3局は
上図81手目の局面で、夕食休憩に突入。。
10手目△7七角成。
上図での持ち駒
▲中村六段: なし
△羽生王座: なし
戦型は両者得意の「角換わり」。
カド番でもう後のなくなった羽生王座から
手損のない角交換が敢行されました。。
37手目▲5六銀。
上図での持ち駒
▲中村六段: 角
△羽生王座: 角
角交換成立後
両者は呼吸を合わせながら慎重に駒組みを進め
両サイドの端歩を丁寧に突き合うと、上図の局面で
後手に続けて先手も右銀を5筋に構えます。。
戦型が「ノーマル角換わり」の定番である
「相腰掛銀」に決まった、次の瞬間。。
38手目△6五歩。
上図での持ち駒
▲中村六段: 角
△羽生王座: 角
羽生王座は1分の少考で6筋の歩を突き出し
後手番ながらも先に仕掛けを開始しました。。
48手目△9ニ香。
上図での持ち駒
▲中村六段: 歩
△羽生王座: 角
しかし、王座は攻勢に出ることはなく
自陣の駒の配置に気を配りながら、着々と
思い描く模様を張りつつ、この先の展開を見据えます。
57手目▲9一角成。
上図での持ち駒
▲中村六段: 桂、歩
△羽生王座: 角、桂、歩
一方、自然な応手を重ねて力を溜めた
中村六段は後手の飛車が突進してきたタイミングで
狙い澄ました反撃に転じ、まずは馬を作ると。。
63手目▲8六香。
上図での持ち駒
▲中村六段: 桂
△羽生王座: 角、歩2
その馬が捕獲した香車で
羽生飛車を仕留め、攻防の主導権を掴みます。。
74手目△4八角。
上図での持ち駒
▲中村六段: 飛、桂2、歩
△羽生王座: 銀、歩3
飛車を渡した羽生王座は
猛然と先手陣に遅い掛かり、模様を乱してから
手持ちの角を投入し、形を決めます。。
上図から次に、中村六段が金を寄せ
後手の角に狙われた金を守ったのをみて。。
(75手目▲6八金)
76手目△2ニ玉。
上図での持ち駒
▲中村六段: 飛、桂2、歩
△羽生王座: 銀、歩3
何と手番を手放し、玉の入城を完了。。
羽生王座にしか指せない大胆かつ柔軟な手渡しに
本局に悲願の初タイトル奪取がかかる中村六段は。。
77手目▲2四歩。
上図での持ち駒
▲中村六段: 飛、桂2、歩
△羽生王座: 銀、歩3
ここがチャンスとノータイムで
後手玉の頭上で歩を突き合わせ反撃に転じました。
羽生王座は△同とは応じずに
まずは角で桂馬を捕獲し(78手目▲3七角成)、以下
△2三歩成~▲同玉をみて、下図81手目▲6一飛と進行。。
81手目▲6一飛。
上図での持ち駒
▲中村六段: 桂2、歩2
△羽生王座: 銀、桂、歩4
中村六段は歩を取り込み、後手玉を吊り上げると
手持ちの飛車を後手陣に投入し、力強く形を決めた
上図の局面で、夜戦に備えて夕食休憩に突入。。
【 夕食のメニュー 】
中村六段: 和牛カレー、グレープフルーツジュース
羽生王座: サンドウィッチ、コーヒー
82手目△8八歩。
上図での持ち駒
▲中村六段: 桂2、歩2
▲羽生王座: 銀、桂、歩3
夕食休憩明けの一手で
羽生王座は8筋に居を構えるオリジナルの
先手飛車の頭上を歩で叩き、クサビを入れます。。
中村六段が2分の少考で
お隣り7筋に飛車を逃がすと(83手目▲7九飛)。。
84手目△6四馬。
上図での持ち駒
▲中村六段: 桂2、歩2
△羽生王座: 銀、桂、歩3
羽生王座はヒモの突いていない
自陣2筋の桂馬を見捨てて、馬を6筋に引き戻し
中村玉の上部を押さえ込みました。。
86手目△2ニ金。
上図での持ち駒
▲中村六段: 桂3、歩2
△羽生王座: 銀、桂、歩3
中村六段がケレン味なく
飛車を成り込み桂馬を捕獲し、王手をかけると
羽生王座は金を寄せて対応。。
上図からさらに、中村六段が
龍で香車を捕獲したところで(87手目▲1一龍)。。
88手目△8六銀。
上図での持ち駒
▲中村六段: 桂3、香、歩2
△羽生王座: 桂、歩3
羽生王座は引いた馬のライン上に銀を投入。。
機敏な王手から、魔性の終盤戦の幕を開きます。。
中村六段は▲7八玉(89手目)と引いて、以下
△7七歩~▲同金~△同銀~▲同玉に△2一金~
▲1五桂~△同歩~▲同龍をみて、下図98手目
△7五馬と激しく進行。。
98手目△7五馬。
上図での持ち駒
▲中村六段: 銀、桂2、香、歩4
△羽生王座: 桂2、歩2
羽生王座は銀との交換で手にした金を
先手の切り札である龍に当てつつ受け駒として投入。。
自陣を厚くし手番を握ると、さらに桂馬を入手してから
フワリと馬を前に出し、嫌らしく金取りをみせます。。
この手を対して
中村六段が敢えて玉を狭い8筋に移動させ
金取りを放置、飛車先を開くと(99手目▲8七玉)。。
100手目△5七馬。
上図での持ち駒
▲中村六段: 銀、桂2、香、歩4
△羽生王座: 金、桂2、歩2
「ああ、そうですか」
と、言わんばかり羽生王座は馬でそのまま
金を捕獲し、互いに危険な状態にもかかわらず
さらりと先手に手番を渡しました。。
101手目▲1四銀。
上図での持ち駒
▲中村六段: 桂2、香、歩4
△羽生王座: 金、桂2、歩2
一時は先手優勢かとも思いましたが
ここにきて形勢は混沌。。それでも中村六段は
攻めるしかないと、羽生玉に襲い掛かりますが。。
120手目△7六金。
上図での持ち駒
▲中村六段: 金、桂2、香、歩6
△羽生王座: なし
いつの間にか強固な陣形を築き上げた
羽生王座は持ち時間を使い切った先手に対して
細かなちょっかいをかけ、さらに攻撃を遅らせると
逆に孤立した中村玉を効率よく追い込みます。。
125手目▲4三同龍。
上図での持ち駒
▲中村六段: 金、銀、桂2、香、歩7
△羽生王座: 桂
まるで滝の落下のような急激かつ猛烈な勢いで
形勢が後手に傾く中、中村六段は捨て身の猛攻に
勝利への一縷の望みを託しますが。。
【 投了図・134手目△3一玉 】
投了図での持ち駒
▲中村六段: 桂、香、歩8
△羽生王座: 飛、桂
羽生王座は完璧な読み切り。。
攻め手が上図の局面をみて、中村六段は
万策尽き果て無念の投了を告げました。。
ハラハラドキドキの中盤戦からの
この大局観、この勝利、そしてこの後味。。
全盛期を彷彿とさせる魔性の強さをみせつけた
羽生王座が今シリーズ待望の初勝利を飾りました。
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ブロ二年目もさらなる飛躍の年に。。
藤井四段激戦譜(炎の七番勝負など)