強かに、勝機逃さず。。第35期竜王戦1組/1回戦「渡辺名人-豊島九段を振り返ろう」
今回は昨日行われました
第35期竜王戦ランキング戦/1回戦の大注目カード
「渡辺明名人-豊島将之九段」の指し直し局の模様を
振り返らせていただきます。。
2手目△8四歩。
上図での持ち駒
▲渡辺名人: なし
△豊島九段: なし
「持将棋」成立により
日付けをまたぐ直前の23時47分より行われた
「指し直し局」は手番を入れ替え渡辺名人の先手で
互いに飛車先を突き合い、対局がスタート。。
9手目▲6八銀。
上図での持ち駒
▲渡辺名人: なし
△豊島九段: なし
そこから「角換わり」を目指す定跡手順の進行となり
迎えた上図の局面で、渡辺名人が銀を6筋に繰り上げ
後手からの角交換、あるいは角交換拒否に備えると。。
10手目△7七角成。
上図での持ち駒
▲渡辺名人: なし
△豊島九段: 角
豊島九段はケレン味なく、角交換を敢行。。
手損のない「ノーマル角換わり」となりました。。
21手目▲4六銀。
上図での持ち駒
▲渡辺名人: 角
△豊島九段: 角
角交換成立後も
両者は息を合わせて早いテンポで指し進み
まずは上図で渡辺名人が銀を4筋の戦場へ繰り出し
「早繰り銀」に形を決めます。。
この手に対し
豊島九段は9筋の端歩を突くと(22手目△9四歩)
渡辺名人が反対サイドの1筋の端歩を突いたのをみて。。
(23手目▲1六歩)
24手目△6四銀。
上図での持ち駒
▲渡辺名人: 角
△豊島九段: 角
同じく銀を飛車先でなく6筋の戦場へ繰り出し
戦型は現代的な「角換わり相早繰り銀」に決定しました。。
すると、次の瞬間
25手目▲3五歩。
上図での持ち駒
▲渡辺名人: 角
△豊島九段: 角
渡辺名人は常套手段の玉の囲いに先がけて
3筋の歩を突き合わせ、早くも仕掛けを開始しました。。
豊島九段は△同歩(26手目)と応じて、以下
▲同銀に△8六歩~▲同歩~△8五歩をみて▲3四歩~
△2二銀~▲6六歩~△8六歩~▲8八歩~△9五歩~
▲6八銀~△4五角~下図39手目▲6七角と進行。。
39手目▲6七角。
上図での持ち駒
▲渡辺名人: なし
△豊島九段: 歩
3筋に拠点を作った渡辺名人に対して
豊島九段は自らの飛車先8筋から反撃に転じると
4筋の好所へ手持ちの角を投入、攻守に利かせます。。
この手に対し
渡辺名人は格言通りに「角には角」の合わせて対抗。。
手番の回った豊島九段は上図から次に、角交換を急がず
△5四角(40手目)と引き、ジッと形を整え力を溜めると。。
48手目△3三歩。
上図での持ち駒
▲渡辺名人: 歩
△豊島九段: 歩
7筋に角を呼び出してから
先手の拠点である3筋で歩を突き合わせ
相手の味を消しに掛かります。。
51手目▲5四角。
上図での持ち駒
▲渡辺名人: 角、歩2
△豊島九段: 歩2
一方の渡辺名人は3筋の歩を突き越してから
続けて角交換を敢行し、相手の手に乗り捌きに出ます。。
66手目△8七歩成。
上図での持ち駒
▲渡辺名人: 角、歩2
△豊島九段: 歩3
角交換成立後、攻勢に出たのは豊島九段。。
9筋の端から鋭く切り込むと、再び攻防の角を投入し
形を決めてから(64手目△4五角)、飛車先から追撃。。
畳み掛ける攻撃で終盤戦の幕を開きます。。
が、しかし。。
73手目▲5三歩。
上図での持ち駒
▲渡辺名人: 角、歩3
△豊島九段: 歩4
渡辺名人は丁寧な受けで後手の攻めを凌ぎ
握った手番で後手玉の頭上へいきなり歩を垂らす
ドキッとする切り返しをみせ、盤上は混沌と。。
81手目▲9一角。
上図での持ち駒
▲渡辺名人: 歩3
△豊島九段: 歩4
それでも、豊島九段は構わず攻め続けますが
渡辺名人が手厚い防衛戦から急所へ角を打ち込んだ
上図の局面が、本局のハイライトとなりました。。
次に△8四歩と香車を払う手が冷静にみせましたが
豊島九段は△4二金(82手目)と寄せて守備に手を入れ
名人に手番を渡して攻めを呼び込みますが。。
【 投了図・107手目▲7三同歩成 】
上図での持ち駒
▲渡辺名人: 金、桂
△豊島九段: 角、歩5
すでに分厚攻撃態勢を整えていた
渡辺名人は勝機を逃さず、そのまま後手陣を制圧。。
豊島九段の捨て身の反撃は形作りに留まり、上図の局面で
万策尽き果て、無念の投了を告げました。。
終局時刻は午前2時57分。
長丁場の激戦をさすがの胆力で見事制した
渡辺名人がタフさをみせつけ、年内最終戦を白星で飾り
新年早々に開幕を迎える王将戦へ気勢を上げました。。