勢いの差まざまざと。。第76期A級順位戦/10回戦「久保王将-渡辺棋王を振り返ろう」
早いもので2月も今日まで。。
毎日が本当にあっと言う間に過ぎて行きます。。
将棋界では昨日
第31期竜王戦ランキング戦6組/3回戦
「中尾敏之五段-牧野光則五段」が稀に見る死闘となり
公式戦長手数の記録を更新する420手目に持将棋成立。
降級点によるフリークラス転落から期限の10年目となる
中尾五段は日々、引退の危機の中で勝利への執念を燃やし
全身全霊で戦い抜きましたが、午前2時14分より行なわれた
指し直し局で力尽き、勝負の世界の厳しさが際立ちました。。
さて、今回は今週の金曜日(3月2日)に行なわれる
「将棋界の一番長い日」第76期A級順位戦の最終戦
11回戦・一斉対局を前に、ラス前10回戦の注目カード
「久保利明王将-渡辺明棋王」の模様を振り返ります。
2手目△3四歩。
上図での持ち駒
▲渡辺棋王: なし
△久保王将: なし
大混戦となった今期のA級順位戦で
久保王将は優勝争いを、渡辺棋王は残留争いを演じ
本局のラス前対局を迎えました。。
先手は渡辺棋王
その初手は飛車先を突く▲2六歩から。。
対します、久保王将は2手目に角道を開く
△3四歩と返し、対局はスタート。。
4手目△4ニ飛。
上図での持ち駒
▲渡辺棋王: なし
△久保王将: なし
続く3手目に、渡辺棋王が角道を開くと
久保王将は飛車に手を掛け、4筋へと振り
振り飛車の王道「四間飛車」を投入しました。。
10手目△8ニ玉。
上図での持ち駒
▲渡辺棋王: なし
△久保王将: なし
飛車のボジションが決まったところで
両者は角道をオープンにしたまま居玉を解除し
息を合わせて玉の囲いを目指します。。
上図から次に
渡辺棋王は飛車先を決め(11手目▲2五歩)
後手から角交換を注文しますが。。
12手目△3三角。
上図での持ち駒
▲渡辺棋王: なし
△久保王将: なし
久保王将は3分の少考で、注文を拒否。
角を3三の地点に上げて2筋を受けました。。
この手をみて、渡辺棋王は。。
13手目▲3三角成。
上図での持ち駒
▲渡辺棋王: 角
△久保王将: なし
6分の考慮の後、角交換を敢行。
後手の主張を受け入れ、自ら角を捌きました。。
16手目△7ニ銀。
上図での持ち駒
▲渡辺棋王: 角
△久保王将: 角
角交換成立後
両者は再び玉お囲いを目指し、久保王将は
上図で振り飛車の相棒「美濃囲い」を完成させると
次に、渡辺棋王が▲7八銀(17手目)と立てたのをみて。。
18手目△2ニ飛。
上図での持ち駒
▲渡辺棋王: 角
△久保王将: 角
飛車を2筋へと振り
「向かい飛車」に構え直しました。。
すると、渡辺棋王は次に。。
19手目▲7七角。
上図での持ち駒
▲渡辺棋王: なし
△久保王将: 角
ヒモのついていない3三の桂目掛けて
手持ちの角を7七の地点に投入、形を決めました。
31手目▲5八金右。
上図での持ち駒
▲渡辺棋王: なし
△久保王将: なし
遅れて久保王将も角を投入すると(22手目△6四角)
両者はジッと自陣を整備し、渡辺棋王は上図の局面で
「左美濃囲い」の連結を完了しました。。
次に、久保王将の△8四歩(32手目)をみて
渡辺棋王が6筋の歩をついてところで(33手目▲6六歩)
午前の対局は終了となり、お昼休憩に突入。。
【 お昼のオーダー 】
渡辺棋王: 100%ハンバーグ弁当
久保王将: 和牛ステーキ定食
35手目▲6七金。
上図での持ち駒
▲渡辺棋王: なし
△久保王将: なし
午後の対局開始の一手で
久保王将が玉の頭上に銀を乗せ(34手目△8三銀)
「銀冠」へのリフォームを指向すると、渡辺棋王は金を上げ
「高美濃囲い」へとシフト。格調高い駒組みが続きます。。
45手目▲7七桂。
上図での持ち駒
▲渡辺棋王: なし
△久保王将: なし
渡辺棋王も「銀冠」を完成させ、駒が、組み上がると
事前に飛車を5筋に合わせた久保王将は、次の瞬間。。
46手目△5五歩。
上図での持ち駒
▲渡辺棋王: なし
△久保王将: なし
その飛車先で歩を突き合わせ
このタイミングで、仕掛けを開始しました。。
51手目▲2四歩。
上図での持ち駒
▲渡辺棋王: なし
△久保王将: 歩
しかし、5筋で歩の交換が成立すると
握った手番で渡辺棋王も飛車先2筋で歩を合わせ
すぐさま反撃に転じました。。
久保王将は△同歩(52手目)と応じて、以下
▲同飛~△4五桂~▲6五歩~△7三角~▲4六角に
△同角~▲同歩~△3七桂成~▲同銀をみて
下図62手目△5八角と進行。。
62手目△5八角。
上図での持ち駒
▲渡辺棋王: 角、桂、歩
△久保王将: 桂、歩2
久保王将が角交換を合図に
軽快に駒を捌いて、先手陣に宣戦布告した
上図の局面で夜戦に備えて夕食休憩に突入。。
【 夕食のオーダー 】
渡辺棋王: 親子丼、ミニうどん
久保王将: 親子丼セット
68手目△5六飛。
上図での持ち駒
▲渡辺棋王: 角、桂、歩2
△久保王将: 桂、歩2
夕食休憩が明けても、久保王将の勢いは止まらず
上図で飛車を突進させ、歩との交換であっさりと手放すと。。
70手目△7六角成。
上図での持ち駒
▲渡辺棋王: 飛、角、桂、歩2
△久保王将: 銀、桂、歩2
握った手番でヒラリと角をひるがえし
銀を捕獲し、渡辺玉への圧力を強めて行きます。。
78手目△9六桂。
上図での持ち駒
▲渡辺棋王: 飛、桂、歩
△久保王将: 銀、歩2
渡辺棋王も天王山に角を打ち込み(71手目▲5五角)
反撃の狼煙を上げますが、久保王将の手は伸び続け
上図で再び桂馬をタダ捨てして香車を呼び込むと。。
(79手目▲同香)
82手目△9六馬。
上図での持ち駒
▲渡辺棋王: 飛、桂2、歩
△久保王将: 香、歩2
先手の角を質駒としたまま
基点の馬を9筋へと寄せ、先の模様を見据えます。。
ここで手番の渡辺棋王は角を敵陣に飛び込ませ
王手で香車を捕獲し、戦力を補強しつつ手番を稼ぐと。。
(83手目▲9一角成)
97手目▲8ニ歩。
上図での持ち駒
▲渡辺棋王: 飛、桂
△久保王将: 香、歩5
攻守ともに渾身の応酬でギリギリ均衡を保ち
勝利への執念を燃やしますが。。。
しかし
【 投了図・112手目△7八歩 】
投了図での持ち駒
▲渡辺棋王: 角、香
△久保王将: 香、歩4
一局を通じて主導権を握っていたのは、久保王将。
上図の局面をみて渡辺棋王は無念の投了を告げました。
終局時刻は午後11時55分。
熱戦を見事制した久保王将は順位戦成績を6勝3敗とし
同日、単独首位だった豊島将之八段が敗れ勝敗で並び
最終戦に逆転優勝の望みが生まれました。。
一方、痛恨の黒星を喫した渡辺棋王は4勝5敗となり
最終戦の三浦弘行九段戦は残留を懸けた鬼勝負に。。
タイトルホルダー同士の一戦は現在の勢いそのままに
くっきりと明暗の分かる結果となりました。
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春間近、見事勝利の吉報到着
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年度末の明暗くっきり。。
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舞台は棋王戦の聖地・北國新聞会館
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渡辺棋王は絶不調。。
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羽生竜王は新たな第一歩
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王将戦/第4局・一日目の所感
舞台は尼崎。。
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美しき挑戦は叶わず。。
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