定跡伝道師・所司七段が「銀冠穴熊」のコツ教えます【将棋世界2018年4月号のご紹介】

定跡伝道師・所司七段が「銀冠穴熊」のコツ教えます【将棋世界2018年4月号のご紹介】

ライター: 将棋情報局(マイナビ出版)  更新: 2018年03月02日

将棋世界2018年4月号(3/2発売)の戦術特集は、「対振り銀冠穴熊」

(1)所司和晴七段による基本講座

(2)藤森哲也五段による次の一手により、プロにも注目されている新機軸の戦法を学びます。

本記事では、所司七段による講座の一部をご紹介。「定跡伝道師」の詳しい解説を読んで、銀冠穴熊をレパートリーのひとつに加えましょう。

基本講座

皆さんこんにちは、所司和晴です。本講座では新しい対振り飛車の作戦として、左美濃から銀冠に早く組み、その後▲6六角と上がって、銀冠穴熊に組んで戦う指し方を解説していきます。増田康宏五段が指し始めてから一躍脚光を浴びた戦法で、対振り飛車の新機軸としてプロ間でも有力視されています。

初手からの指し手

▲7六歩 △3四歩 ▲2六歩 △4四歩 ▲4八銀 △4二飛

▲6八玉 △9四歩 ▲9六歩 △3二銀 ▲5八金右 △7二銀

▲5六歩 △6二玉 ▲5七銀 △5二金左 ▲7八銀(第1図)

早い▲7八銀に着目

振り飛車側は角道を止める四間飛車から、美濃囲いに組む順で進めていきます。仮に四間飛車側が穴熊に組む場合でも、銀冠穴熊は有力です。

従来は振り飛車穴熊に対して銀冠穴熊に組むと、参考1図のように7筋の歩を交換されて、居飛車が不満と見られていました。以下▲7六歩を打つと△7二飛のあと、△5四銀~△6五銀や、△7四金から△6五金や△7五歩の歩の合わせを見せられて、先手不利となります。

【参考1図△7五同飛まで】

しかし参考1図から、▲7六歩を打たずに▲7八金右△7二飛▲6六銀(参考2図)と組んでいくと、先手も十分対抗できることがわかりました。先手は次に▲6八角と活用できて好調子です。

【参考2図▲6六銀まで】

後手の美濃囲いに対しては、早い▲7八銀(第1図)が注目の一着です。これまでの定番は▲7八玉でしたが、左美濃を急ぐ指し方が、対四間飛車に限らず中飛車や三間飛車でも増えています。

【第1図は▲7八銀まで】

第1図以下の指し手

△6四歩 ▲7九玉 △7一玉 ▲2五歩 △3三角 ▲8六歩

△7四歩 ▲8七銀 △7三桂 ▲7八金 △6三金 ▲6六角(第2図)

▲6六角がポイント

7九玉型の左美濃に組んだあと、▲8六歩~▲8七銀と早めに銀冠の骨組みを作るのが大事な手順です。以前の左美濃といえば、8七玉型の天守閣美濃がよく指されていましたが、参考3図のように組まれると、△6五歩の位取りが大きく、居飛車側は駒組みに苦労をします。

【参考3図△4三銀まで】

【第2図は▲6六角まで】

第2図を見てください。▲6六角がポイントとなる新構想です。8八に角がいたままでは玉が囲えないのですが、▲7七角では△6五桂の両取りがあります。それにしても戦場になりそうな6筋に飛び出す▲6六角とは、大胆だと思いませんか。△6五歩と突かれると▲7七角と引く羽目になり手損をするので、考えにくい発想です。

▲6六角で無難に指すなら▲6六歩ですが、駒組みが進むと参考4図のようになります。図は一局ですが先手に積極性がなく、以下▲5九角なら△5五歩▲同歩△同銀の調子で、後手十分でしょう。このように角道を止めて駒組みをすると、居飛車としては不満が残る駒組みになります。▲6六角は角道を止めないで積極策を残しつつ、なおかつ玉も固めてしまう、一石二鳥を狙った序盤の勝負手とも言えるでしょう。

【参考4図△8二玉まで】

第2図以下の指し手

△6五歩 ▲7七角 △8二玉 ▲8八玉

△4三銀 ▲9八香 △8四歩 ▲9九玉 (第3図)

【第3図は▲9九玉まで】

第2図はこの戦型の基本図といえる局面です。後手は△6五歩と突き▲7七角で1手得をしますが、この歩を突かない指し方もあります。

ひとつは△4五歩と角交換する指し方で、以下▲7七桂△8二玉▲8八玉△5四歩▲3三角成△同銀▲6六歩△8四歩▲6七金右△1四歩▲1六歩(参考5図)という展開です。

【参考5図▲1六歩まで】

これは従来からある順で、お互い手詰まり模様になりやすくなります。図以下△8三銀▲3六歩△7二金▲3七桂△1二香の進行なら、▲2四歩△同歩▲5一角(参考6図)の強攻策が成立します。途中▲2四歩に△同銀は、▲6一角が本筋の攻めです。

【参考6図▲5一角まで】

参考6図以下一例は、△4三飛なら▲3三角成△同飛▲2四飛△2三歩▲2五飛。△2二飛なら▲4五桂△4二銀▲2三歩△3二飛▲7三角成△同金寄▲4四桂。他にも変化は多岐にわたりますが、強引に攻めていずれも先手ペースといえるでしょう。

先手は▲8八玉と入城し、▲9八香から▲9九玉(第3図)で、いよいよ銀冠穴熊に組み替えます。

第3図以下の指し手

△8三銀 ▲6八金右△7二金 ▲8八金

△5四歩 ▲7八金右(第4図)

【第4図は▲7八金右まで】

銀冠穴熊が完成

第3図から後手は銀冠に組み替えるのが無難な順です。△5四歩▲6八金右△6四金▲8八金△5二飛▲7八金右△5五歩▲同歩△同金と中央を制圧する手には、▲2四歩△同歩▲7五歩(参考7図)の反撃が利きます。以下△8三銀なら▲7四歩△同銀▲7五歩△8三銀▲2二歩で、桂が入ると▲7四桂の筋が厳しい狙いです。

本譜の△5四歩も無難な手待ちです。△5二銀では角頭が弱くなり、▲7八金右△5四歩▲3六歩△5三銀▲3五歩△同歩▲3八飛△6四銀▲3五飛(参考8図)となると、先手の飛車がさばけて後手不利です。

【参考7図▲7五歩まで】

【参考8図▲3五飛まで】

▲7八金右と締まって、ついに銀冠穴熊が完成しました。この戦法は増田康宏五段が指し始めてから、若手棋士間の中でも増えている戦型ですが、元はアマチュアの方が、コンピュータソフトの指し手からヒントを得て採用し、広まったそうです。ちなみに私のPCにインストールしている「激指 定跡道場」(マイナビ出版)の検討モードで調べてみると、第2図の▲6六角は最善手と出ます。また組み上がった第4図の評価値は、先手が+200点以上で、先手有利と判断しました。

続きは将棋世界 2018年4月号でお読みいただけます。

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