第89期棋聖戦5番勝負/第3局「豊島八段、手堅い勝利でタイトル奪取へ王手」
前人未到の11連覇を目指す羽生善治棋聖に
豊島将之八段が挑戦する、第89期棋聖戦5番勝負。
ここまで2局を消化し、1勝1敗のイーブン。
勝者がタイトルに王手をかける正念場の第3局が
本日、静岡県沼津市「沼津倶楽部」にて開幕。。
第3局の先手は、豊島八段。
その初手は飛車先を突く▲7六歩から。。
2手目△3ニ金。
上図での持ち駒
▲豊島八段: なし
△羽生棋聖: なし
早々と居飛車を明示し
何でもござれの先手に対して、羽生棋聖は
2手目に角道を開くでも、飛車先を突くでもなく
△3ニ金と返し、態度を保留して対局はスタート。。
この手をみて
豊島八段がそのまま飛車先を決めると。。
4手目△7ニ飛。
上図での持ち駒
▲豊島八段: なし
△羽生棋聖: なし
羽生棋聖はノータイムで
飛車に手をかけると、お隣り7筋へと移動。。
この大舞台で何と、「袖飛車」を採用しました。。
「袖飛車」はプロの対局でもほとんどみない
奇襲戦法中の奇襲戦法で、定跡形をとにかく外し
力将棋に持ち込みたい、羽生棋聖の胸の内が
どよめきとともに盤上へと投影されました。。
6手目△7四歩。
上図での持ち駒
▲豊島八段: なし
△羽生棋聖: なし
後手の意表に対して
豊島八段は動じることなく、3分の少考で
左の金を7筋に上げると(5手目▲7八金)
羽生棋聖が飛車先の歩を突いたのをみて。。
7手目▲2四歩。
上図での持ち駒
▲豊島八段: なし
△羽生棋聖: なし
豊島八段は2筋の歩を突き合わせ
挨拶代わりに飛車先から仕掛けを開始。。
12手目△7五歩。
上図での持ち駒
▲豊島八段: 歩
△羽生棋聖: なし
以下、△同歩~▲同飛~△2三歩の進行となり
飛車先の歩を切り、一歩を手にした豊島八段が
飛車を元居た場所に下げると(11手目▲2八飛)
羽生棋聖は自らの飛車先を決めます。。
この瞬間、7筋の歩は突きづらい
豊島八段が次に、▲6八銀(13手目)として
自陣左辺の整備に取り掛かると。。
14手目△3四角。
上図での持ち駒
▲豊島八段: 歩
△羽生棋聖: なし
羽生棋聖は1分の少考の後
おもむろに自らの角道を通しました。。
19手目▲3六銀。
上図での持ち駒
▲豊島八段: 歩
△羽生棋聖: なし
一方、角が押さえ込まれた
豊島八段は銀を早々と戦場へと繰り出し
飛車と絡めた活用を急ぎます。。
27手目▲2五銀。
上図での持ち駒
▲豊島八段: 歩
△羽生棋聖: なし
飛車先の位を張り、角道を通した後手の前に
指し手が限られる豊島八段は、慎重に間合いを計りつつ
まずは居玉を解除し、6筋に寄せてから(21手目▲6九玉)
銀を飛車先に乗せ、「棒銀」での攻めを目指しますが。。
30手目△1三角。
▲豊島八段: 歩
△羽生棋聖: なし
羽生棋聖はすかさず桂馬を跳躍させ(28手目△3三桂)
先手の「棒銀」を追い払ってから、事前に歩を突いた1筋へ
角を繰り出し前方を鋭く睨み、押さえ込みを図ります。。
32手目△5ニ玉。
上図での持ち駒
▲豊島八段: 歩
△羽生棋聖: なし
豊島八段が1筋の歩を突き出番を回すと
羽生竜王は玉を立て、「中住まい」に構えました。。
この手をみて、豊島八段も。。
33手目▲5八金右。
上図での持ち駒
▲豊島八段: 歩
△羽生棋聖: なし
離れ駒の金を玉に連結して自陣を引き締めた
上図の局面で午前の対局は終了、お昼休憩に突入。。
【 お昼のメニュー 】
豊島八段: カツカレー、ミニサラダ
羽生棋聖: 特上にぎり寿司
35手目▲7六歩。
上図での持ち駒
▲豊島八段: 歩
△羽生棋聖: なし
午後の対局開始の一手で
羽生棋聖は駒組みは終わったとばかりに
飛車先7筋の歩を突き合わせ、仕掛けを開始します。。
豊島八段は23分の考慮で▲同歩と応じて、以下
△同飛をみて▲1五歩~△同歩~▲7七銀~△5六飛~
▲1五香~△3五歩~▲5七歩~△5四飛~▲1三香成に
下図46手目△3六歩と激しく進行。。
46手目△3六歩。
上図での持ち駒
▲豊島八段: 角、歩2
△羽生棋聖: 銀、歩3
羽生棋聖は角取りに構うことなく
飛車で模様を動かし、銀を捕獲しました。。
55手目▲3三桂成。
上図での持ち駒
▲豊島八段: 角、桂、歩5
△羽生棋聖: 銀、香、歩3
羽生棋聖は小駒を利かせて
標的とした先手の飛車を追い回しますが、しかし
模様が解れて活気づく豊島八段も鋭く反撃に転じ
最初の仕掛けから一気に本格開戦となりました。
64手目△2四飛。
上図での持ち駒
▲豊島八段: 角、歩3
△羽生棋聖: 銀、桂、香、歩4
豊島八段が待望の角道を通すと(57手目▲6八銀)
羽生棋聖はダイナミックな動きで揺さぶりをかけ続けた
飛車を上図で2筋へと振り、先手の飛車に直接ぶつけて
このタイミングで飛車交換を注文します。。
豊島八段はこの申し出で受け入れ
直後に飛車交換が成立、大駒が捌かれました。。
68手目△7七歩。
上図での持ち駒
▲豊島八段: 角、歩3
△羽生棋聖: 飛、銀、桂、香、歩3
飛車交換成立後
豊島八段は手にした飛車をすぐに敵陣に投入。
味よく金・銀両取りをかけました(67手目▲2一飛)。。
この手に対し
羽生棋聖は敵陣7筋に叩きを入れて
先手の角を呼んでから(69手目▲7七角)。。
74手目△3九飛。
上図での持ち駒
▲豊島八段: 角、金、歩4
△羽生棋聖: 桂、歩3
手持ちの香車と飛車を連続投入。。
より直線的に攻撃の形を整えました。。
次に、豊島八段が銀を引いて王手を防ぐと。。
(75手目▲5九銀)
76手目△7七香成。
上図での持ち駒
▲豊島八段: 角、金、歩4
△羽生棋聖: 角、桂、歩3
羽生棋聖はズバリと香車を走らせて
角を取り返し、いざ終盤戦の幕を開きました。。
83手目▲4ニ桂成。
上図での持ち駒
▲豊島八段: 金、銀、香、歩4
△羽生棋聖: 歩2
先に踏み込んだのは豊島八段。。
互いに手持ちの角を盤上に投入し合ってから
桂馬を飛び込み、銀を捕獲し王手で迫ります。。
しかし
羽生棋聖が△同銀(84手目)で桂馬を払うと。。
85手目▲6八銀打。
上図での持ち駒
▲豊島八段: 金、香、歩4
△羽生棋聖: 桂、歩2
豊島八段は手にしたばかりの銀を
手堅く自陣に打ち込み、受けに回りました。。
93手目▲4八香。
上図での持ち駒
▲豊島八段: 金、歩4
△羽生棋聖: なし
豊島八段は単騎の龍に仕事をさせて
後手に貴重な二枚の歩を使わせてから
手持ちの香車を自陣に投入、さらに手厚く
強大な要塞を築き、専守防衛に徹します。。
ここで手番を渡された
羽生棋聖は、3分の少考の後に。。
94手目△5七桂成。
上図での持ち駒
▲豊島八段: 金、歩4
△羽生棋聖: 歩
戦場に吊るした二枚の桂馬のうち
左の桂馬を敵陣へと放り込み、勝負に出ました。。
108手目△3六馬。
上図での持ち駒
▲豊島八段: 桂、歩4
△羽生棋聖: 銀、桂、歩2
しかし、先手の分厚い牙城は簡単には揺るがず。。
それでも羽生棋聖は手練手管の指し回しで食らいつき
紛れを探りつつ、勝利への執念を燃やしますが。。
【 投了図・145手目▲5五同玉 】
投了図での持ち駒
▲豊島八段: 飛、角、金、銀2、桂2、歩5
△羽生棋聖: 飛、金、銀、歩
豊島八段は最後の最後まで
慎重かつ手厚い指し回しで握った形勢を放さず。。
上図の局面で羽生棋聖は無念の投了を告げました。。
終局時刻は午後7時33分。
難解なねじり合いを見事に制した豊島八段が
悲願の初タイトル奪取へ、堂々の王手をかけました。。
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舞台は静岡、沼津決戦。。
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王位戦開幕は7月4日
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名人戦/第6局終局直後の印象。。
名人戦/第6局・一日目の所感
舞台は将棋のまち、天童にて。。