土壇場で底力。。第89期ヒューリック杯棋聖戦5番勝負/第4局「羽生棋聖完勝、決着は最終戦へ」
前人未到の11連覇を目指す羽生善治棋聖に
豊島将之八段が挑戦する、第89期棋聖戦5番勝負。
ここまで3局を消化し、豊島八段が2勝1敗とリード。
悲願の初タイトル奪取に王手をかけて迎えた大一番
第4局が本日、新潟県新潟市「高島屋」にて開幕。。
第4局の先手は、羽生棋聖。
カド番に立たされもう後のない本局の初手は
飛車先を突く▲2六歩から。。
2手目△8四歩。
上図での持ち駒
▲羽生棋聖: なし
△豊島八段: なし
対します、豊島八段も
2手目に同じく飛車先を突く△8四歩と返し
注目の対局はスタートとなりました。。
4手目△8五歩。
上図での持ち駒
▲羽生棋聖: なし
△豊島八段: なし
早々と相居飛車が確定すると
次に両者は息を合わせて飛車先を決め
大一番の戦型は「相掛かり」に決定。。
6手目△3ニ金。
上図での持ち駒
▲羽生棋聖: なし
△豊島八段: なし
続く5手目に、代えて▲7八金とする手も有力でしたが
羽生棋聖は▲7六歩と角道を開き、「横歩取り」への変化をみせ
後手の出方をうがかいます。。
この手に追随して、後手も角道を開けば
「横歩取り」への進行が濃厚となりましたが、豊島八段は
ノータイムで△3ニ金と返し、先手に手番を渡しました。。
すると。。
9手目▲6八銀。
上図での持ち駒
▲羽生棋聖: なし
△豊島八段: なし
羽生棋聖は後手の飛車先を角で受け(7手目▲7七角)
そのまま「角換わり」を目指す定跡手順の進行に。。
迎えた上図の局面で
羽生棋聖が銀を6筋に上げて、後手からの角交換
あるいは角交換拒否に備えると。。
10手目△7七角成。
上図での持ち駒
▲羽生棋聖: なし
△豊島八段: 角
豊島八段は1分の少考で角交換を敢行。
手損のない「ノーマル角換わり」となりました。。
18手目△7四歩。
上図での持ち駒
▲羽生棋聖: 角
△豊島八段: 角
角交換成立後、次なる焦点は右銀の活用。。
羽生棋聖が4筋の歩を突き、「腰掛銀」をみせると
豊島八段は飛車のコビンを開き含みを持たせますが。。
28手目△6三銀。
上図での持ち駒
▲羽生棋聖: 角
△豊島八段: 角
双方、銀を自陣に留めたまま駒組みは進行。。
同形模様の進行となった上図の局面で豊島八段は
銀を6筋に上げて、先手と同じく「腰掛銀」模様に。。
33手目▲4八金。
上図での持ち駒
▲羽生棋聖: 角
△豊島八段: 角
次に9筋の端歩を突き合ってから
羽生棋聖は「▲6八玉+4八金+2九飛」型の
最新形に自陣の駒を組み上げました。。
一方の豊島八段も、上図から次に
右の金を立てれば、先手のリバースモードとなる
「△4ニ玉+6ニ金+8一飛」型が完成しますが。。
34手目△5ニ金。
上図での持ち駒
▲羽生棋聖: 角
△豊島八段: 角
豊島八段はここも1分の少考で
△5ニ金と上がり玉と連結、自陣を引き締めました。。
が、しかし
この手をみて羽生棋聖が次に6筋の歩を突くと。。
(35手目▲6六歩)
36手目△6ニ金。
上図での持ち駒
▲羽生棋聖: 角
△豊島八段: 角
豊島八段はノータイムで
5二の地点に構えたばかりの金を6筋に寄せ
「△4ニ玉+6ニ金+8一飛」型を完成。。
敢えて一手を損する
趣向の戦術で手番を先手に渡しました。。
38手目△5四銀。
上図での持ち駒
▲羽生棋聖: 角
△豊島八段: 角
羽生棋聖は動じることなく、1分の少考で
銀を中央5筋に繰り出し「腰掛銀」に形を決めると
豊島八段はもすぐに追随し、銀を同じく5筋に構え
戦型はおなじみの「角換わり相腰掛銀」に決定。。
43手目▲4五桂。
上図での持ち駒
▲羽生棋聖: 角
△豊島八段: 角
戦型が決まると、豊島八段は再び
玉を左右に移動させながらパスを繰り返します。。
その間に、手堅く玉の「入城」を完了した羽生棋聖は
右の桂馬をポーンと戦場へと跳躍させました。。
この手に対し、豊島八段が次に
狙われた銀を桂先に上げてかわしたのをみて。。
(44手目△4四銀)
45手目▲2四歩。
上図での持ち駒
▲羽生棋聖: 角
△豊島八段: 角
羽生棋聖は飛車先2筋の歩を突き合わせ
自然な指し手を重ねつつ、仕掛けを開始しました。。
豊島八段は△同歩(46手目)と応じて、以下
▲同飛~△2三歩~▲2九飛~△6五歩~▲同歩~
△7五歩~▲6九飛に下図54手目△7六歩と進行。。
54手目△7六歩。
上図での持ち駒
▲羽生棋聖: 角、歩2
△豊島八段: 角、歩
2筋で歩を交換し、羽生棋聖が一歩を手にすると
豊島八段はすかさず反撃に転じて、中盤の押し合いへ。。
羽生棋聖が飛車を6筋へと振り直し、新たな拠点を作っても
豊島八段は構うことなく7筋から踏み込み攻勢を強めます。。
62手目△6七歩。
▲羽生棋聖: 角、歩3
△豊島八段: 角、歩
歩の突き捨てを連発し敵陣を乱した豊島八段は
羽生棋聖が8筋のキズを消したのをみて(61手目▲8六歩)
先手の飛車先に嫌らしく歩を垂らしました。。
ここで手番の羽生棋聖は。。
63手目▲2ニ歩。
上図での持ち駒
▲羽生棋聖: 角、歩2
△豊島八段: 角、歩
12分の考慮の後
タダの歩を取り込むことなく、敵陣2筋を歩で叩き
鋭く攻め合いを求めました。。
この手をみて
ここまで消費時間わずか14分と早指しを進めた
豊島八段の手が止まり、長考へ。。
64手目△4五銀。
上図での持ち駒
▲羽生棋聖: 角、歩2
△豊島八段: 角、桂、歩
32分の長考の末に
豊島八段も叩かれた歩を取り込むことなく
銀を突き出し、桂馬を食いちぎると。。
66手目△6五銀。
上図での持ち駒
▲羽生棋聖: 角、銀、歩2
△豊島八段: 角、桂、歩2
羽生棋聖の▲同歩(65手目)をみて
もう一枚の銀を桂馬の利きに放り出し、捌きに出て
上図の局面で午前の対局は終了、お昼休憩に突入。。
【 お昼のメニュー 】
羽生棋聖: 庭うどん(温)、天ぷら、おにぎりのセット
豊島八段: ハンバーグランチ
68手目△6五桂。
上図での持ち駒
▲羽生棋聖: 角、銀2、歩2
△豊島八段: 角、銀、桂、歩2
午後の対局開始の一手で
羽生棋聖が戦場に張った二枚の銀のうち
右の銀で後手の銀を捕獲すると、豊島八段はすぐに
桂馬を跳ねて銀交換が成立。。
ここで、羽生棋聖は中に浮く桂馬ではなく
2筋の歩を前に出して、敵陣の桂馬を剥がしました。
(69手目▲2一歩成)
この手をみて、豊島八段は再び長考へ。。
70手目△5五角。
上図での持ち駒
▲羽生棋聖: 角、銀2、桂、歩2
△豊島八段: 銀、桂、歩2
49分の長考の後
ここは勝負と豊島八段は天王山・5筋の位へ
手持ちの角を打ち込み、攻勢を続けます。。
逸る後手に対して、あくまでも冷静な
羽生棋聖は7筋に歩をあてがい、王手を防ぐと。。
(71手目▲7七歩)
72手目△6八銀。
上図での持ち駒
▲羽生棋聖: 角、銀2、桂、歩
△豊島八段: 桂、歩2
先手の飛車先にガツンと銀を投入。。
この手には1時間と17分を費やした豊島八段は
気合と焦りを交錯させつつ、アクセルを強く踏み込みます。。
が、しかし。。
83手目▲6四銀。
上図での持ち駒
▲羽生棋聖: 銀、歩3
△豊島八段: なし
百戦錬磨の羽生棋聖は
後手の胸中を見透かしたような懐広い指し回しで
模様をリードし、大捌きの手配を巧みに整えました。。
上図から次に
豊島八段は桂馬で角を払い(84手目△8六桂)、以下
▲5五銀~△同歩~▲6五銀~△2一飛~▲5四桂~
△3一玉に下図91手目▲8六金と進行すると。。
91手目▲8六金。
上図での持ち駒
▲羽生棋聖: 角、銀、桂、歩3
△豊島八段: 角、銀、歩
一連の捌きが終わると、後手玉を敵陣最下段へと落とし
自玉の頭上の懸念を消した、羽生棋聖が形勢を握ります。。
111手目▲5三角成。
上図での持ち駒
▲羽生棋聖: 金、銀、桂、歩4
△豊島八段: 香、歩
形勢を損ねた豊島八段は、それでも
あの手この手で食らいつき、勝利への執念を燃やしますが
しかし、勝者のメンタリティーがついに目を覚ました羽生棋聖は
つけ入る隙を与えることなく、勝負を決めに前に出ます。。
【 投了図・133手目▲3ニ金 】
投了図での持ち駒
▲羽生棋聖: 飛、金、桂2、歩6
△豊島八段: 角、銀2、歩
豊島八段は最後まで最善を尽くすも
羽生棋聖の牙城は崩れず、上図の局面をみて
無念の投了を告げました。。
終局時刻は午後7時8分。
土壇場でさすがの底力を発揮した羽生棋聖が
カド番を凌ぎ、決着は最終戦までもつれ込みました。。
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棋聖戦/第4局開幕前夜。。